Nikon Z6 シグマ105㎜f1.4Art 戸田にて
少年の日の思い出・・・
あれは、いつのことだったのだろう
両脇に父と母がいて
僕の手を繋いでくれていた
僕は幸せそうに
二人に身を預け
飛行機をしてもらう
「ブーン・・・アハハねぇもう一回・・・」
母は重いよ〜と言いながら手を繋ぎ
父も笑いながらブーンと言ってくれる
幸せだった・・・
多分弟がいなかったので
3歳くらいの記憶だろうか・・・
そのまま3人で手を繋いで歩いていると
パチンコ屋があった
父が
「ねぇ、入ってみようか?」
と母に声をかけた
「え〜、私やったことないよ〜」
と言いつつ完全否定はしていなかった
で、3人で店内へ・・・
この頃のパチンコ店は
今のようなデジタル表示なんかはもちろんなくて
羽物と呼ばれるオーソドックスなもの
ジャラジャラと受け皿に玉を入れ
一発づつ手で弾いていくものだった
チューリップと呼ばれる部分に玉が入ると
花が開き、そこに玉を入れると
下の受け皿からザクザクと玉が出てくる
僕はパチンコ台に座り
両サイドの台に両親が座った
それぞれに玉を弾いている様子を
僕は眺め、そして僕もやりたいと駄々をこねた
父親が
「内緒だぞ」
と言って一掴みの玉を僕の台に入れてくれ
「ここを弾くんだよ」
とレバーを指差した
喜び勇んで僕はレバーを弾く
そうこうしているうちに
父と母の台の玉は台の下の穴に吸い込まれていった
母が
「あ〜あ、終わっちゃった、やっぱり上手くいかないねぇ、
あら?信之さんも終わったの?」
と父の台を覗き込む
「信也に玉あげたからだよ、なぁ信也・・・」
と、僕を見る
その時、弾いた玉が
台の真ん中のチューリップに吸い込まれていった・・・
突如けたたましい音を立てて
台のすべてのチューリップが開き
弾かれた玉がチューリップに吸い込まれていく・・・
受け皿に玉がザクザクと溢れてきた
父が慌てて
受け皿から箱に玉を入れ
瞬く間に玉は箱いっぱいになった・・・
3人での帰り道
僕の手には大きな紙袋があった
全てをお菓子に替えてもらい
ホクホク顔での帰路であった
「お父さんも、お母さんも出せなかったのに
信也はすごいなぁ・・・才能あるかもな」
父に言われて嬉しかった
「ねぇ、お菓子いっぱいもらえてよかったねぇ・・・」
母の嬉しそうな顔を見て
僕は幸せを感じた
3人で帰る道が夕日で照らされて綺麗だった・・・
そんな記憶・・・
僕が40歳を過ぎようとした頃、
父に、その記憶の話をした
父は僕が玉をいっぱい出したことは覚えていなかったが、
パチンコに行ったことは覚えていた
なんと、その一回しかパチンコに行ったことがないと言っていた
そのたった一回の記憶を僕は覚えていたのだ・・・
僕の幸せの記憶・・・
愛の記憶だ・・・