ニコンZ6 SIGMA105㎜f1.4Art 国際フォーラムにて
言葉にすること
僕は永らく、付き合っていた彼女に
付き合い始めてから
「好きだよ」
と言ったことがない
僕が真由美ちゃんと付き合い始めた頃に
彼女に言った言葉・・・
真由美ちゃんは、
「そんなの言葉にしなくちゃわかんないよ
思ってるだけじゃ伝わらないよ」
と言った
僕は、なんだか
「好きだ」
と言う言葉が薄っぺらく感じられて
何でかはわからないが
「好きだ」
と口に出して言えなかった
もちろん、彼女のことは「好き」なのだが
何故か口に出して言うのは憚られた
考えてみれば
うちの父も母に対して
「好き」
と言わない人だった
子どもの頃
「ねぇ、お母さんのこと好きなの?」
と父に聞いたことがある
父は、真面目な顔をして
「好きじゃなきゃ、お前たち生まれてこないだろ」
と言った
僕は、その言葉を聞いて
なんだか嬉しい気持ちになったのを覚えている
うちの両親は仲が悪く
よくケンカをしていた
母が実家に帰ってしまって
2週間くらい帰ってこないことも
よくあった
そんな両親を見ていたので
「好きだ」
と言う言葉を口に出すことが怖かった
口に出したら
嘘になってしまうんじゃないか
もしかしたら
喧嘩して離れ離れになってしまうかもしれない
あるはずもない恐怖に
心が埋め尽くされ
どうしても
「好きだ」
と言えなかった
そんな僕に
真由美ちゃんは
いつも変わらぬ愛を僕に与えてくれていた
そして、いつも僕に
「好きだよ」
と言ってくれた
真由美ちゃんと付き合いはじめて
そろそろ20年が経とうとしている
真由美ちゃんは
変わらず、僕に
「好きだよ」
と言ってくれる
少し変わったところといえば
僕も
「好きだよ」
と言えるようになったこと
いつも感じていた
「好き」
に対する薄っぺらい気持ちは
いつの間にかなくなっていた
20年と言う月日をかけて
真由美ちゃんが与え続けてくれた気持ちが
僕の「好き」に対する
漠然とした不安を取り除いてくれたのだと思う
まだまだ表現不足な僕は
真由美ちゃんから
「言葉が足んないんだよなぁ」
と言われながら
「好きだよ」
と心からの言葉で伝えている
付き合い始めて
20年・・・
多分、今の真由美ちゃんが一番綺麗だ・・・