パナソニックFZ-20 奥多摩にて
とにかく、一刻も早く・・・
車のキーを捻り、エンジンを掛け
車をスタートさせる
長野県上田市にむけてハンドルを切った
軽井沢の先ということは
関越から長野入りだろうということで
まずは関越へ
熱のせいか頭がボーっとする
必死に道の先を見据え
アクセルに力を入れる
意識も朦朧とする中
様々な想いがよぎる・・・
またか・・・
真由美ちゃんと出会う前
婚約していた彼女がいた
両親に挨拶もすませ
福島で結婚式をする為
式場も押さえていた
必死の思いで婚約指輪も買って渡した・・・
あと半年で結婚という状況で
「別れたい・・・
あなたとは一緒にやっていけません
もう限界です」
いきなりだった
僕にとっては何の予兆も無かった
ショックだったが
何も言わずに受け入れた
彼女がそう望むのなら受け入れよう・・・
まったく同じじゃないか!
俺は何か変わったのか
また、同じことを繰り返すのか?
嫌だ
もう同じことは繰り返さない!
とにかく、自分がきちんと受け入れ
られないのに相手の思いだけ
受け入れるわけにはいかない!
きちんと自分の気持ち伝えないまま
終わらせられない
もう一度
自分の気持ちを伝えよう
そう思った・・・
朦朧とする意識の中
過去の自分と今の自分の意識が
行ったり来たりしていた
車は関越に乗り
藤岡JCTを抜け
上信越自動車道に入った
後少し・・・
軽井沢を抜けたあたりから
雪が舞い始める
「来たか・・・」
降っているだけなら
車はまだ大丈夫
車のヘッドライトが伝える
路面状況と
ハンドルから伝わるインフォメーションを
頼りに車を走らせた
雪はさらに強くなり
うっすらと路面上にも積り始める
「まだだ、まだいける」
薄氷を踏む思いで車を進め
何とか無事上田の駅に着いた
時計は12時を回っていた
携帯を取り出し
電話を掛ける
「プルルル、プルルル・・・・・」
「はい・・・」
「着いたよ・・・今駅の前にいる
ホテルはどこなの?」
「駅前にある○○ホテル・・・
○○号室だよ」
「わかった・・・待ってて」
携帯を切り、車を進める
胸がドキドキしていた
もしかしたら終わるかもしれない
いや、そうじゃない
これからまた始めるんだ!
想いを伝えなければ・・・
ホテルの駐車場に車を入れ
フロントで話をし、エレベーターにのり
言われた階のボタンを押す
そして、部屋の前に立ちノックをした
ドアが開き
そこに真由美ちゃんが立っていた
・・・泣いていた・・・
何も言わず
そのまま部屋に入り
きつく抱きしめた
「ごめん、淋しい思いさせてごめん
俺は真由美ちゃんじゃないとダメなんだ
今まで甘えててごめん
俺、自信がなくて
真由美ちゃんにふさわしい人間じゃ
無いって
ずっと思ってたんだ
でも、やっぱり
それでも俺は
真由美ちゃんでなきゃだめなんだ!
愛してるんだ!」
届け・・・
届け・・・
祈るような気持ちで
抱いた手に力を込める
「・・・たしだって
私だって信也さんしかいないんだから~
ごめんね、試すようなことして
でも、怖かったんだ
もし、来てくれなかったらどうしよう
終わっちゃったらどうしようって
ありがとう
わたしも
愛してる」
「ありがとう、ごめんな
そんな思いさせちゃって
これからもっと
自分の気持ち出すし
もっと自分に自信持つよ
なんたって
こんな凄い人が
俺のこと好きなんだもんな」
泣きながらそういうと
真由美ちゃんも
「そうよ、私が選んだ人なんだから」
と泣きながら笑って言った
続く・・・